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 ディーゼル燃料の極意

 はじめに
 模型ディーゼルエンジンは圧縮熱だけで点火して運転されるため燃料の選定が重要になります。これまでの経験から得たノウハウを紹介しますが、実機と同じく模型ディーゼルエンジンも進化の途中ですからまだまだ新しい発見があるはずです。

 良くある質問
Q「燃料の成分は何ですか」
A「主成分は灯油です。これを気化させるためにエチルエーテルを加え、潤滑のためのオイルが入ってます。」
Q「燃料はどのくらい保存できますか。」
A「密閉された金属容器にいれて冷暗所に保存すれば数年は持ちます。」
Q「燃料の引火性や爆発の危険はないですか。」
A「単体のエチルエーテルは気化し易く、引火の危険もありますが、混合された燃料ではグロー燃料と同等以下の危険性と考えられます。」
Q「どうして臭いがきついのですか。」
A「ディーゼル燃料の臭いは、エーテルの刺激臭と灯油の臭みと燃焼促進剤の混合臭ですから容易に除去できません。点火剤を入れなかったり灯油の代わりに流動パラフィンを用いればいくらかましになります。」
Q「エーテルは気化し易いので使っている内に成分の割り合いが変わるのではありませんか。」
A「そういう傾向はありますが、エーテルは初めから多めに含まれているので、1リットル缶を2ヶ月ぐらいで使いきるようにすれば問題ありません。ただし蓋をしっかり閉める事が必要です。」
Q燃料チューブは何を使えばいいですか。
A「シリコンチューブは使えません。ビニールチューブ、ネオプレンゴムチューブ、ガソリン用タイゴンチューブが使えます。」

それぞれの要素の説明
 炭化水素系主燃料
 これは実機ディーゼル機関と同様、高カロリーでセタン価が高い(着火性が良い)ものが必要です。灯油、軽油、流動パラフィン、ジェット燃料のケロシンなどが使えます。模型エンジンの場合は実機よりずっと高い回転数で使われるのでセタン価は50以上、できれば60ぐらい欲しいところです。基本的なパワーはこの選定によりますからレーシング用にはできるだけ多く入れるようにします。
 エチルエーテル
 模型ディーゼルは予混合気圧縮着火方式のため、燃料を気化させるために混入します。エーテルは爆発可能な空燃比の幅が広いのでニードルのセットがし易くなりますが、それ自体のカロリーは低いので入れ過ぎるとパワーが低下します。
 潤滑油
 グローエンジンと異なり、ディーゼルではずっと厳しい条件です。グローでは運転温度さえ低下できればよいような場合でも、ディーゼルではそれ以上に油性とか油膜の強さが求められます。理屈では鉱物油、合成潤滑油、植物油のいずれもが使える筈ですが、試してみると、特に耐熱性能が求められない限りひまし油が最適です。
 燃焼促進剤
 燃料の着火性を向上させるために用いられます。硝酸エチル、亜硝酸アミル、硝酸イソプロピル(I,P,N)などが使えます。適度に添加すると始動性が向上し圧縮も下げられますが、その反面運転温度が上がり過ぎてパワーが低下したり、スロットルコントロールが利かなくなることもあります。
 その他
 特殊添加剤として酸化防止剤、清浄剤、レーシング仕様の燃料に加える制爆剤(4エチル鉛)などがありますが通常のラジコン飛行機用エンジンには必要ありません。

 配合比の決め方
 燃料の配合はエンジンの特性と使用目的に応じて決めます。きっちり管理しようとすると大変煩雑になるので、ここではおおまかな傾向を示します。
 混合気を作るためのエーテルの分量は20%で十分ですが、使用中に蒸発することを考えて30%入れるのが普通です。過度に混入すると、エンジンの運転温度は上がるのに回転は上がらないような状態になります。
 潤滑油はひまし油を使うのが基本です。エンジンの設計や品質の違いにより15〜35%の範囲で決めますが、気温が5℃以下になると燃料全体の粘性が高くなって適正なニードルセットができなくなることがあります。この場合にはひまし油の分量を減らしたり合製油を用いたりします。例外的に、チームレース専用エンジンでは耐熱性に優れた合製油を5%だけで使うこともあります。
 燃焼促進剤は0から多くても3%です。小型エンジンでは多めに、反対に5cc以上の大型エンジンにはほとんど入れません。
 残りの部分が灯油などの主燃料です。

 燃料配合の具体例
MD25、[ひまし油25%、エーテル32%、灯油41 %、I,P,N2%] 
これはPAWやMVVSなどの小型鉄ピストンエンジンをヨーロッパの気象条件で使うように考えられた配合です。始動性が良くパワーも出ます。始動後は圧縮を下げ、ニードルを絞ってピークを出す設定ですからどちらかと言うと一定回転で使うC/LやF/F機に適します。しかし日本の夏場に使うと過熱してパワーダウンします。
 C-30、[ひまし油30%、エーテル30%、灯油40%]
この配合は鉄ピストンエンジンのブレークインに使いますが、大型ディーゼルや気温30℃以上の日にラジコン機を飛ばす場合にも適します。しかしパワーや始動性はMD25より劣ります。
 冬の配合、[ひまし油7% クロッツオイル10%、エーテル30%、 I,P,N2%、灯油51%]
これはオイル分だけの変更ですから、MD25を灯油で薄めてもいいのです。
 競技用の配合
 [クロッツオイル7%、エーテル18%、I,P,N2%、四エチル鉛0,01% ケロシン72,99%]
これはティームレーシング用の高速低燃費の配合例です。24000rpmの高速で回す場合はトルクが極めて小さくなるので、オイルは少なくても大丈夫です。エーテルの分量がぎりぎりなため、厳密な管理下で取り扱わねばなりません。
 とにかく回わせる配合 [2サイクルモーターサイクル用鉱物油50%、エーテル50%]
 鉱物油をこれだけ入れてもニードルを絞るとオイル切れによる過熱を引き起こしますが、古いタイプの一部のエンジンでは、これでないと回らないものもあります。

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