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HINESS44twin 2009年 4月

試運転
分解写真 クランクシャフトはコンロッドを外してから抜く。
  水平対向2気筒のハイネスエンジンが佐藤氏から回ってきました。2ストロークフラットツウィンというのは振動がキャンセルされる実用性が高い形式で、ヤマハの産業用小型ヘリにも採用されています。模型エンジンとしてはコストが高くなるので市販された例は多くありませんが、小型無人機の動力として開発するために調べました。

 このエンジンはラジコンヘリ用に製造されたもので、手元の物のシリアルNo.は639ですから多数生産されたようです。
 分解する前に運転してみました。すると予想通り混合気の分配不良を起こして、左のシリンダーはまったくのオーバーチョーク状態なのに右シリンダーは供給不足に陥っているありさまです。ニードルセットができないと全くパワーにならないことはご存知の通りです。

 もし、負荷変動が激しいヘリに搭載したならパワー不足でニードルが絞られることになって、そこでクラッチが滑りでもしたなら一番荷重がかかる所がオイル切れでイカレたとでしょう。

 その対策は後で考えるとして、分解してみました。クランクシャフトは削り出しの一体もので焼き入れはありません。クランクピンは研磨されておらず、コンロッドは分割式で軸受けメタル材はありません。コンロッドはプレスの打ち抜きですから量産に適しています。短時間の運転ではこの部分に目立った損傷は認められませんでした。

 製造の都合で左右のシリンダーがそろっていて、アルミ棒から削り出しの一体ものですから、コンロッドの大端部がオフセットしてしまい、しかも薄くなっています。コンロッドのセンターがオフセットしているのでこじられるような力が掛かります。このためピストンには側圧の他に前後振れの圧力も掛かりますから、激しい摩耗が予想されるためピストンはクロームメッキされています。

 分配不良の原因は後部シャフトのドラムローターにあると思われます。ここは他の設計例ではピストンヴァルヴやリード弁を採用して逃げているところで、しかもこの吸入タイミングがでたらめで、いけません。
 というわけでまだ回転がどうのこうのという段階ではありません。どうしたら良いか考えると、まず吸入タイミングを直して、左シリンダーの掃気通路を狭めてみます。これで良くなればニードルを絞って回し込み、コンロッドメタルの減り具合をチェックします。減りが大きければメタル材として薄い銀板を入れます。それでもだめならコンロッドを作り直しますが、このとき小端部をボールジョイントにするためピストンも作り直しになりますから、相当な時間(年月)がかかりそうです。

一体型のクランクシャフト。 一体型のクランクシャフト。
ベアリングキャップ付きコンロッド。 試運転

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