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 ENYASS15D テストラン 2003年 11月
写真1 最初の運転

  塩谷さんからサンプルエンジンが送られて来ましたので、ベンチで回してみました。(写真1)今回も、まず、箱だし状態そのままで回しました。プロペラはグラウプナー10−6 旧タイプ、燃料は模航研RCD、MD25、C-30を試しました。イニシアルランを終えた状態で最高7800rpm,(マフラー付)スローは2500rpmほどでした。
 このエンジンにはTN型スロー絞りつきキャブのローターに3,8mmの制限筒を入れたキャブが付いています。そのためスロー回転時の混合気を薄く合わせることができます。回してみると対向ニードルのテーパーとノズル径との関係がディーゼル燃料に合っていないような印象がありますが、実用上は問題ありません。
 燃料の選定は使う目的によります。ピークパワー重視の場合はナイトレイト入りのものを用いて圧縮を低めにしてニードルを絞り込みます。スロットルレスポンス重視で、巡航時に中速を使う場合はC-30が適します。この場合はフルスロットル時にわざと圧縮を高めにしておいてニードルをやや濃くセットします。それからスローにして対向ニードルを合わせるのが正しいやりかたです。

 ディーゼルエンジンに不馴れなユーザーは運転を見て圧縮とニードルの両者の状態を把握するのが困難かと思います。ときにはニードルセットが濃い状態のままトミーバーを締め込んでククランクシャフトを折ってしまうこともあります。
1950年代のENYA15ディーゼルではそういう事がよく起こり、私も昔、折ったことがあります。このエンジンではそういう心配は少ないのですが、ディーゼルエンジンの基本の「き」として過濃ニードルでは圧縮を上げてはいけないと覚えて下さい。この、両者の関係は、実際の使い方を見ながら習得するのが早道ですから、ディーゼルエンジンの集いなどに参加されることをお勧めします。
写真2 運転後のヘッド

 運転後に分解してヘッドの状態を見ますと、カウンターピストンが0,3mmヘッド側に入り込んだ状態でした。写真2では分かりにくいのですが、これはC-30燃料で8000rpmほど回した後の状態ですから、カウンターピストンの調節機能が圧縮不足になることはないと思われます。また、燃焼室の円錐形部分が少なく、フラットな部分が多くなっています。理想的にはこの段差をなくし、あくまでも円錐形を維持できるといいのですが、現実にはなかなか難しいところです。

 写真3ではピストン頂面右側に三日月形の白い部分が見えます。こちらは掃気ポート側で、掃気孔から新気が大量に流れ込んでいるのが分かります。この様子から掃気の流れがシリンダー内に燃焼できない過濃部分を作ってしまい、十分なパワーが出ていないと推定されます。今までの経験から、ここを改善すれば1000rpm以上アップすると思われます。しかし逆に、このせいで気温が30℃の夏場にはオーヴァ−ヒートしにくいでしょうから、必ずしも欠点とは言えません。

 
 今回コンロッド大端部のメタルを柔らかいAC(アルミ鋳物)材で作ってみました。というのはディーゼル運転しているとクランクピン側が磨耗する傾向があるためメタル側を磨耗させるためです。写真4でコンロッドの右にあるのが取り替えたリン青銅のストックパーツで、下にあるのがそのための叩き出しツールです。結果は相当時間使ってみないと分かりません。

 このエンジンはヘッドの締め付けにあまり気を使いませんし、ステンレスビスに交換する必要もありません。
全体的に見て使い易い性格です。だだし燃料のオイル分は減らせません。ひまし油30%入れたナイトレイトなしの燃料を推薦します。

写真3 ピストン頂面 写真4 メタル交換したコンロッド


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模航研  長野県小諸市大字諸308-1