トップページヘ

   ENYA ウルトラ11CXD
 ベンチテストレポート 2003年 9月

 はじめに
 塩谷製作所から11CXウルトラ、ディーゼルエンジンが発売されました。模航研でもこれを入手して試運転をしました。前回11CXDのテストレポートではエンジンユーザーとして常識的と思われる事は省略しましたが、実際にはこの常識がさほど知られていないようなので、今回は蛇足と思われる「常識」も書き加えます。「常識」ある方は当然飛ばし読みできます。
ベンチテストの流れ
 通常、新品ディーゼルエンジンを回す時にはまず分解して、内部の仕上げや合わせなどをチェックして再組み立てしてから回しますが今回は一般ユーザーがそのまま回す事を想定して、文字どうり箱だし状態で回しました。試運転手順は、最初の始動→条件、状態の確認→条件を変えて再運転→仕上がり状態の確認。という流れになります。

 運転1 
1、イニシアルランニング
 テートンのアルミ製テストベンチに正立状態で固定し、グラウプナ−10-5、模航研RCDディーゼル燃料、ノーマフラー、気温は29℃。最初はピストンがゆるい感じがしてなかなか始動できない。排気孔から多めのプライミングするが今度は飲み過ぎになって圧縮を下げねばならなくなる。数回クランクすると今度はピストンがゆるく感じられて圧縮を上げねばならない。この繰り返しで爆発する圧縮点を探すが、圧縮ネジのピッチが荒いので良い点が探しにくい。スターターを使いたくなるがぐっとがまんしてクランクし続ける。
 スタートさせて圧縮とニードルを合わせると回転は5800rpm。ペラをマスターエアスクリュー9-5に変えて再始動させると回転は8800rpm。運転時間はここまで数分。

常識1、テストベンチは金属のブロック製品で取り付けの平面が出ているものを使う。


 運転2
2、ヘッド温度の測定
 燃料を模航研MD25に換えて同じペラを回す。今度はすぐ始動。マスターエアスクリュー9-5で11000rpmでヘッド温度は58℃。燃料をRCDに換えると10000rpm、ヘッド温度は54℃。同じ燃料でグラウプナー10-5を7100rpm、ヘッド温度41℃。マフラーを取り付けてスロー調整すると2200rpm、フルスロットルで7100rpm。

 運転3 
3、調整運転の最後
 ヘッドに0,1mmガスケットを入れ、ヘッドビスを均等にそっと絞める。MD25燃料、マスターエアスクリュー9-5、ノーマフラーで調整運転。回転のピークを出したりスロー調整しながら数分回す。フルスロットルで11100rpm。気温25℃ヘッド温度62℃ながら過熱症状で、スロットル全閉でも最スローにならない。ここで燃料をRCDに換えると、トミーバーを約40°右に回して、(圧縮を上げる)ピーク回転10400rpm、ヘッド温度51℃。マフラーを付けると10500rpm、スローは2300rpm。ここまでの運転時間は合計十数分。(写真3)


常識2、ヘッドネジ締めはT型の六角レンチを使う。
常識3、ブレークインとは単に金属面同士の摺り合わせだけでなく金属の熱膨張を見越した歪み取りでもあるということ。

 解説
4、自作のT型六角レンチ
 運転1、2は英語で言う「イニシアルランニング」でブレークインは終了していないが、機体に搭載できる状態になったことが確認できます。
 運転3 は別の意味での確認運転で、それはヘッドネジの締め付け調整と燃料の相性の確認です。

 ヘッドの締め付けについて
5、六角レンチの持ち方
 このエンジンはシリンダーとカウンターピストン入りのヘッド形状との関係から、取り付けビスを均等に締め付けなかったり、強く絞め過ぎるとシリンダートップが広がり、ひいてはピストンの実圧縮が低下して、パワーダウンを伴う運転の不調状態をもたらします。そのためには専用のT型六角レンチを用意して極くゆるい力で均等にネジを絞める必要があります。正しいレンチの持ち方を写真5に示します。また、ヘッドに0,1mmのガスケットを追加すると弱い締め付けトルクでも圧縮漏れなく取り付けられます。数値的には3kg/cmぐらいかと思われますが、トルクレンチでは設定できないような微妙な締め加減です。

 燃焼室形状
6、調整運転後のカウンターピストンの状態
(通常は調整運転終了後に分解してはいけない。)
 0,1mmのガスケットを追加した運転3の後ではずしたヘッドはカウンターピストンが0,2mmほど突き出した状態でした。(写真6)これでもヘッドクリアランスは0,25mmほどあります。この円錐形の燃焼室は伝統的な形状で、着火性が良く回転もアップします(要求セタン価が低い)が形状圧縮比を十分に高められないのでレーシング使用には不適です。

 燃料の選定
 運転3ではたまたま過熱症状が出ましたが、気温が28℃以上ではどんなモデルでも多かれ少なかれ過熱症状が出ます。実際に飛行させる状態でないと燃料の選定はできませんが、このモデルではナイトレイ入りの燃料では過熱気味と判断できます。しかし気温が18℃以下なら問題ないはずです。

7、スロー運転のチェック。 8、テストに使ったプロペラ 上がマスターエアスクリュー9-5、
下がグラウプナー10-5      
 使い方と向き不向き
 先行発売された11CXDは15000rpm以上の高速運転でもパワーを引き出せますが、ウルトラの方は高速回転に伴う高い運転温度ではパワーを出せないと思われます。しかしこれは必ずしも欠点ではなく、より大きな行程容積を生かした、余裕馬力を大きく取るような使い方に適します。具体的には8000rpmぐらいで低めの圧縮状態、甘めのニードルセットということになります。こうすれば再始動がきわめて容易になり、R/Cスクランブル競技にはもって来いの性能です。また、専用のNo154マフラーを付けると回転が150rpmぐらい向上します。

 賢いユーザー
 常識4、模型エンジンメーカーは最低限のコストでできる限りの品質を保持した製品を販売しているということ。
9、カウンターピストン下面を落とす。
 つまり、そこにはユーザーの能力と責任によってより良くエンジンを回せる余地があります。模型エンジンは電気を流せば勝手に回リ出すモーターとは異なり最低限の知識を持ち、モデラーとしての経験則を働かせることで初めて良く回せるのです。その意味で以下のように手を加えました。
 1、ヘッドとシリンダーの間に0,1mm厚のアルミガスケットを入れる。
 2、ヘッドネジを同じ長さのステンレス製に換える。(ステンビスは鉄製より熱膨張が大きく、本来のファスナーとしての性能は劣りますが、このような場合では相対的にテンションが小さくなるので締め付けトルクを比較的大きく設定できます。)
 3、カウンターピストンのエッジを0,2mm落とす。(運転3で突出した分を削り取ります。これは長野県のような寒冷地の冬に使う時に、極限まで圧縮を上げなければならない場合を想定しています。また、ユーザーが不用意に圧縮ネジを締め込んだ時のフェイルセイフにもなります。やり方はオイルストーンを用いて少しずつ落とします。これによる燃焼室形状の変化は無視できる範囲内です。)(写真9)


 ユーザーサポート
 模航研ではこのエンジンを販売する他、調整部品も用意しています。
 写真10調整部品一組 ¥2000、写真11調整部品と0,2mm落としたカウンターピストン組み込み済みのウルトラCXD ¥15800、 ウルトラ11CXDメーカーオリジナル¥13900、No154マフラー¥900、(いずれも送料別)

10、オリジナルの調整部品一式
11、ウルトラ11CXD模航研調整品¥15800

>>戻る

模航研  長野県小諸市大字諸308-1